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第十八話 雉子と孔雀

last update publish date: 2026-06-09 05:58:42

 深夜――

「いかにせん 山で聞きつる 呼子鳥よぶこどり 春の宮へと おとづれんかな」

 外から頼浮の声がした。

 春宮が来たのだろう。もちろん中の君のところに。

 忘れてましたけど今日のお客様方の中に春宮がいたんでしたわね。

 宴が終わったから中の君に会いに来たのだ。

 頼浮に――というか帝以外の人に春宮を追い返せるとは思えないが一応通していいか聞いてくれてるのだろう。

 私は妻戸を軽く叩いた。

 頼浮はすぐそこにいるはずだ。

「春宮様は中の君のところに通して構わないって言ったはずよ」

 私が小声で囁く。

「春宮はお通ししたのですが少納言がこちらに向かっているのです」

「よく招待したわね」

 てっきり出入り禁止になったのかと思ってましたわ。

「別の少納言です」

 頼浮が私の考えを察して言った。

 少納言というのは――というか各官職の長官以外はほとんどがそうなのだが――何人もい

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     深夜――「いかにせん 山で聞きつる 呼子鳥 春の宮へと おとづれんかな」 外から頼浮の声がした。 春宮が来たのだろう。もちろん中の君のところに。 忘れてましたけど今日のお客様方の中に春宮がいたんでしたわね。 宴が終わったから中の君に会いに来たのだ。 頼浮に――というか帝以外の人に春宮を追い返せるとは思えないが一応通していいか聞いてくれてるのだろう。 私は妻戸を軽く叩いた。 頼浮はすぐそこにいるはずだ。「春宮様は中の君のところに通して構わないって言ったはずよ」 私が小声で囁く。「春宮はお通ししたのですが少納言がこちらに向かっているのです」「よく招待したわね」 てっきり出入り禁止になったのかと思ってましたわ。「別の少納言です」 頼浮が私の考えを察して言った。 少納言というのは――というか各官職の長官以外はほとんどがそうなのだが――何人もいるのだ。 だから官職名の前に『何々の~』とつけて区別するのである。「二人は部屋を出たんでしょ」 中の君がいないのなら別に部屋に入られたところで構わない。「いえ、今日は中の君の母屋で……」「あら……」 つまりこのままだと春宮と少納言が鉢合わせしてしまうのだ。 だから私の判断を仰ぎに来たらしい。「…………」 私は考え込んだ。 これは使えるかも知れませんわ――。「いかがいたしますか?」「いいわ。少納言をそのまま行かせて」「……よろしいんですか?」 頼浮が驚いたように言った。 驚くくらいなら最初から追い返せばいいでしょうに。「春宮様と中の君が一緒にいるのを見たって少納言が言い触らしてくれれば入内させるしかなくなるでしょう」

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